SaaS契約の棚卸し術——使っていないサブスクを見つけて年間コストを削減
「あのツール、誰か使ってる?」——この質問が出た時点で、たぶん誰も使っていません。
SaaSの契約は増える一方で、気づけば月額だけで相当な金額になっている。情シスとして「使われていないSaaS」を洗い出して年間コストを削減した話をまとめます。
なぜSaaSは「気づいたら増えている」のか
SaaSは導入が簡単です。クレジットカード1枚で契約でき、部署単位で勝手に導入されていることもある。無料トライアルから有料プランに自動移行するケースも多い。
結果として「契約しているけど使っていない」「同じ機能のツールが複数ある」「退職者のアカウントが残っている」という状態が生まれます。いわゆる「SaaSスプロール」です。
棚卸しの手順
Step 1: 全契約のリストアップ
まず現在契約中のSaaSを全て洗い出します。経理部門に月額・年額の支払い一覧をもらうのが最も確実。クレジットカードの明細、請求書のメール検索、経費精算システムの検索も組み合わせます。
この段階で「え、こんなの契約してたの?」というものが出てくるのはあるあるです。管理用のスプレッドシートには、最低限「サービス名/契約者/月額料金/契約更新月/用途/利用部署」の6項目を入れておくと、後の判断がしやすくなります。
Step 2: 利用状況の確認
各SaaSの管理コンソールで「直近30日間のアクティブユーザー数」を確認します。ログイン履歴がないアカウント=使っていない可能性が高い。
管理コンソールがないサービスの場合は、契約者・利用者に直接ヒアリング。「使ってますか?」と聞くだけで「そういえば最近使ってないです」という回答が返ってくることが多いです。
Step 3: 判断と整理
利用状況に基づいて3つに分類します。
- 継続:アクティブに利用されている
- 統合:同じ機能の別ツールがあり、片方に統合できる
- 解約:使われていない、または代替手段がある
「統合」が一番効果が大きいことが多い。チャットツールが2つ、ファイル共有が3つ——そういった重複を解消するだけで、月額コストが大きく下がります。
実際に見つかった重複の例
| カテゴリ | 重複していたツール | 対応 |
|---|---|---|
| チャット | 社内チャットA+社内チャットB | 片方に統合、もう片方は解約 |
| ファイル共有 | クラウドストレージ3種 | 用途別に1〜2種へ集約 |
| Web会議 | 会議ツール2種(部署ごとに別契約) | 全社で1種に統一 |
| タスク管理 | 使われていないツール | 解約 |
こうして表に整理すると「なぜ同じ用途のツールを複数契約していたのか」が一目で分かります。多くの場合、部署ごとに個別導入した結果、全社では重複していたというパターンでした。
棚卸しで気をつけたこと
契約更新日を確認する:年間契約のSaaSは、更新日を過ぎると自動更新されてしまう。解約を決めたら更新日の1〜2ヶ月前にはアクションを取る必要があります。
データの退避を忘れない:解約前に、そのSaaSに保存されているデータをエクスポートしておくこと。解約後にデータが消えて困る——という事故は意外と起きます。
利用者への事前告知:いきなり解約すると現場が混乱する。「○月末で解約します。代替は△△を使ってください」と十分な猶予を持って告知します。
解約プロセスで実際に困ったこと
解約フローが分かりにくいSaaSは想像以上に多いです。マイページから即解約できるものもあれば、サポート窓口にメールで解約依頼を出さないといけないもの、営業担当への連絡が必要なものまでさまざま。特に年間契約で「解約は更新日の◯日前までに書面で通知」といった条件が付いているケースは要注意で、気づいたときには自動更新後だった、という失敗も一度経験しました。それ以降は棚卸しリストに「解約手続きの方法」と「解約申請の締切日」も併記するようにしています。
実際の効果
初回の棚卸しで、使われていないSaaSや重複契約を整理した結果、年間で数十万円規模のコスト削減ができました。金額もさることながら、「今うちが何のSaaSを使っているか」が一覧で把握できるようになったことの方が価値が大きかった。
以降は四半期ごとに簡易棚卸しを実施しています。新しいSaaSが増えるたびにリストに追加し、利用状況を定期的に確認する仕組みにしています。棚卸し用のスプレッドシートは経理部とも共有し、支払いが発生した時点で自動的に一覧へ反映される運用に変えたことで、抜け漏れも減りました。
まとめ
SaaSの棚卸しは「面倒だけどやれば確実に効果が出る」作業です。最初の1回が一番大変ですが、一度リストを作ってしまえば、以降のメンテナンスは楽になります。
「うちのSaaS契約、全部把握できている?」——この質問に即答できない場合は、棚卸しのタイミングかもしれません。金額の大小に関わらず、契約数が10を超えたあたりから「誰が何のために契約したか分からないSaaS」が生まれやすくなる印象なので、契約数がまだ少ないうちから一覧管理の習慣をつけておくのがおすすめです。
よくある質問
Q: 棚卸しの頻度はどのくらいがいい? A: 初回は徹底的に、以降は四半期ごとの簡易チェックがおすすめです。契約更新月が集中する月には重点的に確認を。
Q: SaaS管理ツールは使うべき? A: 契約数が多い企業なら検討の価値はあります。ただし、まずはスプレッドシートで一覧を作るところから始めても十分です。
Q: 解約の判断は誰がすべき? A: 情シスだけで判断せず、必ず利用部署にヒアリングしてから決めるのが安全です。表向き使われていなくても、実は特定の業務でしか使わない年1回のツールだった、というケースもあるためです。
Q: この記事の情報はいつ時点のもの? A: 2026年6月時点の情報をもとに書いています。
