「全部AIでやれ」と言われた情シスの1年間——導入の理想と現実
「AI使えば全部自動化できるんでしょ? 情シスでやってよ」——経営層のこの一言から、波乱の1年が始まりました。
AI=魔法だと思っている上層部と、現場の現実のギャップ。そのギャップを埋めながら、実際にAIで何ができて何ができなかったのかを振り返ります。
経営層の期待 vs 現場の現実
経営層が思う「AI導入」:ボタンひとつで業務が自動化される。人件費が削減できる。すぐに効果が出る。
現場で起きること:まず業務の棚卸しが必要。AIに渡すデータの整理が必要。ルール作りが必要。ユーザー教育が必要。そして効果が出るまでに時間がかかる。
このギャップを埋めることが、情シスの最初の仕事でした。
最初にやったこと
まず全ての業務をリストアップし、「AI化できる・できない」を仕分けました。判断基準は3つ。
- 定型的か:パターンが決まっている作業はAI化しやすい
- データがあるか:AIは過去のデータがないと動けない
- 判断を伴うか:最終判断が必要な業務は、AIは補助に留めるべき
この仕分けの結果、「全部AIでやる」のは不可能で、「部分的にAIで効率化する」が正解だと分かりました。経営層への報告もこのロジックで行い、期待値の調整に成功しました。
うまくいったこと
議事録の要約:会議の録音をAIに要約させる。これは効果が大きかった。議事録作成の工数が大幅に削減。
FAQ対応の自動化:AIチャットボットで定型的な問い合わせに自動回答。情シスの対応工数を削減。
定型メールの下書き:よくあるパターンのメール(納品確認、請求書送付等)の下書きをAIに生成させる。
この3つだけで、月あたり数十時間の工数削減効果がありました。
うまくいかなかったこと
全社導入の壁:情シスチームでAIを使いこなしても、他部署に展開すると「使い方が分からない」「面倒」「前のやり方でいい」の壁にぶつかる。技術より文化の問題。
データ整備の手間:AIに業務データを渡そうとすると、そもそもデータが整理されていない問題にぶつかる。ExcelやPDFに散らばった情報を構造化する作業が想像以上に大変だった。
セキュリティへの懸念:「社内データをAIに入れて大丈夫なの?」という質問に、明確に答えられる体制を作るのに時間がかかった。ガイドラインの作成、利用ルールの整備、社内説明会の実施——この準備だけで2ヶ月近くかかりました。
1年経って思うこと
「全部AIでやれ」は無理だった。でも「部分的にAIで効率化する」ことで、確実に仕事は楽になった。
大事なのは期待値の管理。「AIは魔法ではなく道具」という認識を社内に浸透させること。そして「小さく始めて、成功事例を積み重ねる」こと。いきなり全社導入を目指すと失敗する。まず情シスチームで使い、効果を数字で示し、他部署に横展開する。この順番を守ったことが、結果的にうまくいった要因だと思います。
まとめ
「全部AIでやれ」と言われても焦らないでください。まず業務を棚卸しして、AI化できるものを特定して、小さく始める。その過程で経営層の期待値を調整し、社内にAIリテラシーを浸透させる。
1年間やってみて確信したのは、AIは「人間の仕事を奪う」のではなく「人間の面倒な仕事を減らす」ツールだということです。上手に使えば、情シスの仕事はもっと面白くなります。
よくある質問
Q: 経営層へのAI導入の提案はどうした? A: 「全自動化は不可能だが、部分的な効率化で月○時間の工数削減が見込める」と数字で示しました。具体的な成功事例(議事録要約、FAQ自動化等)を先に作って、その結果をもって提案すると説得力が出ます。
Q: この記事の情報はいつ時点のもの? A: 2026年6月時点の情報をもとに書いています。
